年見悟
アンジュ・ガルディアン 復讐のパリ/富士見ファンタジア文庫
 ペストの猛威が何度となくヨーロッパを襲っていた時代。盗賊と不気味な殺人者の噂に怯えるパリに、吟遊詩人の少女マリーがやって来る。明るい歌声と「アンジュ」の芸によって町の人々に迎え入れられた彼女は、その影に重い涙を背負っていた。彼女に深い悲しみを植え付けた男と対峙すべく、夜のパリを歩くマリー。そんな彼女と出会い、支える個性的な面々。
 文庫の特徴もあってか、挿絵と文体ではさらっと読めてしまうのですが、舞台背景はとても重いお話です(つーか私、富士見ファンタジア文庫でこの手の話って見たことないと思う…あんまり読んでないけど)。「アンジュ」とは何か、マリーの追い求める男の正体、そして残虐な殺人者の真意。貧富の差、身分の差が顕著にある時代、その余波を思い切りかぶらざるを得ない弱い階層の人々が中心ですので、きれいな挿絵に釣られて安易に読み始めるとちょっとつらいです。けれども心構えして読んでみて欲しい。
 作者さんはこれがデビュー作となるようで、そのためか「言いたいこと」「書きたいこと」が訴えかけるかのように強く感じられました。(01.08.03)
アンジュ・ガルディアン2 惨劇の聖夜/富士見ファンタジア文庫
 上記続編。すっかりパリの生活に馴染んだマリー。友人もでき、吟遊詩人としても名が知れ始め、歌と芸に研鑚の日々。
 この当時のパリのクリスマスは、12月24日から、年を越えた1月6日まで行われていた。だがこの初日、聖なる日となるはずだった夜、突如パリは残虐な大量殺人の現場と化す。狩るものと狩られるもの、平和な童話の登場人物に見立てた筋だてから惨劇の舞台を用意する黒幕。狩られる側に所属する男が、マリーの秘密を盾に彼女を巻き込む。そしてまた一人、重傷を負って病院に担ぎ込まれた少女がいた。その弟は、マリーの住む孤児院の少女と共に、真犯人を探るべく冬の狩猟場に足を踏み出す。
 後書きに記された著者の心構えを読むまでもなく、この話に対する意気込みが如実に感じ取れます。(2002.01.19)