榛名しおり

花降る千年王国 ゲルマーニア伝奇/角川ビーンズ文庫
 架空歴史小説。舞台は古代ゲルマン。まだ国家が成立しておらず、部族ごとに争いを繰り返していた時代。豪族の首長の姪ながら、異なる民族の奴隷を母に持つため軽んじられていた少女リンゼは、停戦協定の人質として隣の部族に輿入れする。結婚相手ヘルマンの思わぬ優しさに惹かれるが、彼はなぜかリンゼを抱こうとしない。しかも今一人、ヘルマンを殺意のこもったまなざしで見つめる側近がいて…。
 敵地に等しい婚家で奮戦するリンゼが大変素直でかわいらしい。キリスト教が新興宗教に過ぎなかった時代で、部族名や民族間の認識などが現代と違うのですが、視点をリンゼに徹底しているため違和感はありません。講談社X文庫ホワイトハートで同名のシリーズが展開されていて、そちらと微妙にリンクしているそうです。
マリア ブランデンブルクの真珠/講談社X文庫ホワイトハート
 17世紀半ばのドイツ。300を超える小国が群雄割拠する中、ハルバーシュタット公国もまた、ブランデンブルクの若き選帝公フリードリヒの軍勢の前に下ろうとしていた。宰相の14歳の娘マリアは公爵令嬢の身代わりとして城に残るが…。
 マリアがもうこれでもかこれでもかというくらい艱難辛苦の連続で。よく人間不信にならなかったものです(しみじみと)。フリードリヒが28歳なので、最初あらすじだけ読んだときは「ロリコン…?」と思いましたが、読んでみてとりあえず納得はできました。ハーレクインな印象ですが、根にあるのは国同士のせめぎあいの中での人間愛かなと思います。(2002.10.7)