東京裁判(上)(下)
小島襄/中公新書



 第二次大戦後、日本の「A級戦犯」を裁いた裁判の記録。
 戦勝国が負けた国を裁くということが国際法に適うかどうか、開廷前から議論があったらしい。戦犯たちの主立った訴因は「平和に対する罪」だった。それに対して弁護人と被告たちは、まず法廷の合法性から争い始め、開戦はやむなき、戦中の日本軍の状況であればしかたなし、などの論拠で対抗する。捕虜の冷遇や「生きて虜囚の辱めを受けず」の弁護に関連して、武士道に関する証人喚問まで行われた。天皇訴追はなしという日米の裏の申し合わせをクリアするために、各方面かなり苦労したらしい。
 最近(98年夏)BC級戦犯の裁判記録が公開され、また東京裁判を扱った映画も上映されて、戦犯、戦争犯罪というものについて考える機会が多かった。この本はどちらかといえば日本側の視点から、被告各人についての裁判の動向をたどり、戦時裁判のありかたの難しさも合わせて書いている。
 上記の映画「プライド」は、敗戦当時の首相だった東条英機を主役に、インドの判事パル(映画ではパール)の視点をからめて東京裁判をつづったもの。(パルは東京裁判の判事の中でただ一人全員無罪を主張した人)作品自体は面白かった。しかし東条英機の目を通した(とする)戦争感が強調され、被告人弁護でかなり責任逃れに見える論告もあったので、実際に侵略された側の人が見れば腹をたてるのは当然と思う。(合わせて映画「南京」も見ると恐いかも…)民族の誇りとは何かを考える糸口にはなるかもしれない。