銀色の恋人
タニス・リー/ハヤカワ文庫



 SF。はるかな未来、人間と見分けがつかないロボットが世に現れた時代が舞台。
 人間の男性そっくりの容姿で、あらゆる音楽を弾きこなす試作品ロボット・シルヴァー。デモンストレーションで流れる彼の歌を、一人の少女が耳にした。短い葛藤の末、十六歳のジェーンは、彼―――シルヴァーを連れ出し、共に生きることを決意する。彼はロボットであり、人間の感情を知らない。だがジェーンは彼に恋をしたのだ。それを許すはずのない周囲から、ジェーンはシルヴァーを連れて逃げる。恵まれた環境を捨て、どこまで続くか分からない、苦しく幸せな逃避行へと。
 丁寧な心理描写、丁寧な訳の美しさで最後まで読ませてくれる。ラストは純粋にSFが好きな人には評判が良くない向きがあるとか。私は感動したくちである。正直なところ、SF的な要素があまり気にならなかった。SFに借景した異種族間恋愛潭と考えたほうが納得しやすいのではないだろうか。