王家の風日
王家の風日/文春文庫



 歴史小説。商(殷)周易姓革命時代の中国が舞台。商最後の王・紂王と彼の叔父である箕子を軸に、今世紀まで神話とすら見なされていた国の興亡を描く。
 中国最古の王朝とされている商。紂王は残虐と不明のためにその王朝を滅ぼしたが、即位当初は英邁な王だったという。商は宗教によってなる国、王はその祭祀の主として存在し、異民族を同じ人間と扱わずに支配してきた。だが支配される国のうちから、やがて周が力をつけ、虐げられた民族の中から希代の軍師太公望が立つ。天に意を問う素朴な人々の前で、しかし紂王は王権を過信し、やがて天は周へと力を傾けていく。
 随所に漢字や当時の風習に対する作者の見識が入り、楽しめる。漢和辞典をぜひ片手に。後書きで甲骨文字まで読んで研究した作者の努力が書かれているが、最初は売れなくて苦労したそう。良くぞ諦めずに書いてくださったと、一読者として嬉しい。