銀河ネットワークで歌を歌ったクジラ
大原まり子/ハヤカワ文庫



 SF小説。
 辺境の農耕惑星に4年ぶりにやってきたカーニバル。16歳のジョシュア、彼のあこがれの少女歌手リガルデは、そこで不思議な生き物、クジラに出会う。
 かつて地球の海でザトウクジラと呼ばれていた彼らは、その時代には10世紀もの寿命をもち、宇宙を泳いで渡ることのできる知的生命体となっていた。空に飛び交う恋の言葉の数々を記録し保存しながら、彼らは歌を歌う。
 それぞれの父親にうんざりしていたジョシュアとリガルデは、クジラから親たちの意外なロマンスを聞かされ、少しずつ変化しはじめる。そしてある日、飛びたがっているクジラのために、彼らはある計画を実行した…。
 父親になった後のジョシュアの回想として書かれた短編。自分の親たちに少年や青年の時代があったことを、古いアルバムを見つけたときのように感じさせられる作品です。表題作ほか5編の短編を収録。