悪霊シリーズ
小野不由美/講談社

「悪霊がいっぱい!」
「悪霊がホントにいっぱい!」
「悪霊がいっぱいで眠れない」
「悪霊と呼ばないで」
「悪霊になりたくない!」
「悪霊はひとりぼっち」
「悪霊だってヘイキ!(上下)」
(以上講談社X文庫ティーンズハート)
「悪魔の棲む家(上下)」
(講談社X文庫ホワイトハート)



 私はキャンパス文庫とかティーンズハート文庫とかにかなり偏見を持っていました。「上下二段で印刷すれば半分の厚さですむ」「会話だけで20ページとるなんて」など、要するに内容がないと思い、本屋さんのパステルカラーの乱舞する棚とは長らく疎遠でした。が。この一連のシリーズは、その認識を揺るがせてくれました(根底から覆すところまではいかなかったけど)。固めのミステリ的小説で定評のある小野先生のホラーですので十分恐いです…。
 超常現象を科学的に観測・研究する「渋谷サイキック・リサーチ」の所長渋谷一也が、谷山麻衣の高校で起こる怪現象の調査に来るところから物語が始まります。ひょんなことから一也の助手を務めることになった麻衣は、個性豊かな同業者たち(坊主、巫女、エクソシスト、霊媒、陰陽師)や協力者とともに、数々の怪現象に当たっていくことになります。
 一応は普通の高校生である麻衣が、持ち前の前向きなバイタリティーで事件を乗り越えていくのが見所のひとつ。麻衣に限らず、登場人物はそろって前向きで「いい性格」をしていて面白い。どう見ても十代なのに超常現象のエキスパートである所長・一也の謎もまた、長いシリーズの中で少しずつ伏線として引っ張られていて、それが一気に解明されるティーンズハートの最終刊は読み応えがあります。またポルターガイストやサイキックや魂呼ばいなど、字面で見るとどうしても胡散臭い怪現象に関しても、現実の過去の事例などを元にそれなりに説明がなされていて、懐疑的・否定的な人でも楽しめるのではないかと思います。
 ティーンズハートからホワイトハートに移った際、それぞれの文庫の特色の違いか、恋愛色の強い話から本格ホラーに変わりました。何と言うか本領発揮…ドアや窓の細い隙間が恐くなること請け合いです。はい。