広島第二県女二年西組
関千枝子/ちくま書房



 ドキュメンタリー。「原爆で死んだ級友たち」のサブタイトル。タイトルの学級の少女たちは、1945年、原爆を頭上に受けた。
 旧制の女学校で、ほぼ全員が13歳か14歳だった。8月6日、彼女たちの勤労奉仕の担当は、広島の中心部での建物疎開作業。惨禍から逃れることはできず、作業を休んでいた者と奇跡的に助かった一人を除いて全員が半月以内に死亡した。
 著者の関氏は休んでいたために難を逃れた一人。彼女は当時のクラスメイトと教師たちの、「その時」以降の足取りを丹念に追った。被爆した場所から、学校へたどり着いたもの、避難のトラックや船に乗せられて遠くへ運ばれたもの、自宅へ帰り着いたもの、運良く家族に見つけてもらえたもの…。火傷の手足で、彼女たちは必死に火から逃げ、生きるために戦った。
 その最期の様子を、生き延びた人たちに聞きながら、著者は同時に記憶の中にある級友の姿もつづる。軍国の窮屈な生活の中で、それでもそこに書かれた少女たちがいきいきとしているのは、生き延びた人が惜しみながら振り返っているためだけではないだろう。読んでいて微笑ましくすら感じた。彼女たちは生きていた。火傷でまた原爆症で、苦しみながら死ぬことになる彼女たちは、それでも確かに生きていたのだ。
 日本は戦争をしていた。他を侵略し攻撃した。その延長として原爆は落とされた。だが彼女たちは誰も殺していない。
 かつて学生だった時代があった身として感想を書きたくなった本。