やさしい竜の殺し方シリーズ
津守時生/角川スニーカーブックス



やさしい竜の殺し方
 まず警告。ボーイズラブが苦手な方には決しておすすめできません。
 剣と魔法もの、RPG的な要素も含まれるファンタジー小説。大陸(かなあ)が47の国に細分化され、それぞれの王家がしのぎを削る中、宮木圏王家の仕事に集まった傭兵たち。そこで「閃光の」と異名される聖騎士アーカンジェルは、真紅の大剣を持つ幻獣ハンター・ウランボルグと出会う。酒だけを口にし、精霊を自在に操る少年ウランボルグは、戦いの続く旅の前にアーカンジェルに対してひとつの「誓約」をする。それは陰陽二つの世界を救うためのひとつの布石だった…。
 ウランボルグの正体は結構早めにわかります。彼がこの世界に来た理由、またその立場にいるための気概なども読みどころです。でも一番の読みどころは誓約者との関係でしょう多分。どっちも男なんですけどね。私はオビのあの「愛してるは最強呪文」という言葉に引いてちょっと手を出しかねてたんですが、読んでみたら本当にそのとおりの内容だったのでびっくり(オビって嘘つかないのね…)。特にウランボルグがアーカンジェルにくそまじめにのたまう愛の言葉ったら、読む前に砂吐き場を確保するのが必須ってくらいすさまじいっす…でも歯が浮く〜と思いながらも、ウランボルグには似合うのねこれが。ラストではもう、この言葉なくして世界はならずという感じでした。
 さて表題の「やさしい」とは、「易しい」か「優しい」か、どちらでしょ? これは読み手の判断にゆだねられます。



ゆがんだ竜の愛し方
 前巻で引き分けだった御大との決着編。やはり1巻では収まらず次巻に持ち越しとなった。
 前巻から2年後。誓約者アーカンジェルの危機に、ふたたび世界の壁を越えるウランボルグ。しかし陰界での王位争いが尾を引き、彼をねらう白い竜が陽界に姿をあらわす。陰陽世界の安定を願い、秘法を求めて塔に挑む二人。その留守につけこんで暗躍する御大。
 今回はウランボルグよりも、彼のご先祖様の方が大活躍します。前回名前の出なかった火のお方もめでたくお名前が判明。



あぶない竜の選び方
 アーカンジェルの親友の騎士フェンリエッタが登場。親父な性格の女性ですが、二人に向かって言いたいことを言いまくってくれて笑える笑える。アーカンジェルが絡むととたんに崩れるウランボルグが見ものでした。
 正攻法の戦いとなりましたが、とても津守さんらしい(と思った)結末でした。ひとつだけ残念だったこと。この作中数少ない男女カップルの結婚式が是非とも見たかった!