閔妃暗殺
角田房子/新潮文庫



 高校の世界史でこの事件を知ったときの驚きと情けなさと言ったらなかった。教科書には記載はなく、世界史の教師が独自の判断で教えてくれたものだ。一国の王妃を、その王宮内で他国の公使が暗殺するという常識はずれの事件が過去に現実にあり、その加害者が日本であるということ。1895年、朝鮮の国母が殺害された事件を、おそらく多くの日本人は知らないだろう。
 この本では暗殺された王妃・閔妃の生涯をたどっている。出生からの前半生と次第に王宮内で地歩を固めていくまでの前半部分、国際社会の渦に巻き込まれていく後半部分に大きく分かれる。舅と王宮内で権力闘争があり、閔妃はロシア寄りの立場を取るようになった。ために彼女を邪魔だと考えた当時の日本公使が、独断で暗殺に踏み切った。独断でもなんでも普通はやらない。
 韓国に何度も足を運んだ著者に、日韓の歴史を正しく伝えてほしいと願う現地の人たちが多く励ましを寄せたとのこと。1行で良いから教科書に載らんかな〜。