家族八景シリーズ
筒井康隆/新潮文庫

家族八景
七瀬ふたたび
エディプスの恋人



 テレパシー能力を持つお手伝いさんの火田七瀬が、家庭に潜む影の部分を抉りだす。「家族八景」で描かれている8つの家庭は、とりあえずお手伝いを頼める程度の財力はある家ばかりである。が、その裏にある孤独、侮蔑、そして虚栄が、七瀬の目(耳?)を通して、少しずつ家とそこに住む人々を崩してゆく。心を覗くという禁断の能力、そこから生まれていく微妙な狂気の描写が白眉。
「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」と続刊が出ているが、こちらは七瀬の超能力に重きを置いたSF小説になっている。どちらが良いかは好みによるだろう。