小麦畑の三等星
萩岩睦美/集英社文庫(コミックス)



 20年ほど前、連載時に読んでいる。とても哀しくてさびしい話という印象が残っていて、今回文庫化されたものを購入するにあたってもしばし悩んだ。
 主人公・碧穂(あお)はかなり風変わりな少女。奇妙なことに彼女には臍がない。両親に愛され友人もいるが、その一事が彼女に周囲からの疎外感を抱かせる。やがて突然芽生える超能力。温和で臆病な少女を取り巻く世界に、敵意や好奇の目が混じる。幼い頃から彼女の逃げ場だった一面の小麦畑にも、ある日ブルドーザーの音が響いた。彼女を救いたいと願う同級生の康太郎は、やがて自分の体に生じた異変を自覚せざるを得なくなる…。
 碧穂は孤独ではなく、また無力でもない。だがそれでも彼女の思い通りに世界が動くことはなく、ひたすらにさびしい。そんな彼女のそばに最後まで居続ける康太郎。結末では彼が碧穂の寂しさを肩代わりすることになる。これゆえに、一応全ての問題にけりがついたラストながら、切ない余韻だけが残る。
 集英社文庫全2巻。