銀曜日のおとぎばなし
萩岩睦美/集英社文庫(コミックス)



 少女マンガ。イギリスを舞台にしたファンタジー。
 絵本も手がける画家兼絵画教室講師のスコットは、ある日ポーという名の小人の少女と出会う。小鳥の背中に乗ることのできる、手のひらより小さい彼女は、小人族の女王の娘(だが王女様という感じではない)。温かく誠実な人柄のスコットとの交流を通じて、好奇心いっぱいのポーは人間に好意を抱く。
 しかしひとつの言い伝えがポーを人間の社会から小人の村に引き戻す。「銀曜日に生まれた一千人目の女」、すなわちポーが死ぬときに小人族が滅ぶというのだ。それを回避するためには、「虹の玉」を見つけるか、生け贄をささげるしかない。ポーの母である女王は、人間から生け贄を選んだが…。
 1983年から84年にかけて「りぼん」で連載されていたおはなし。か細く美しい絵で、シビアでいながら温かいストーリーが展開される。…ってここまで書いておいて何だが、こんな風に私の下手な文で堅苦しくあらすじだの何だのを示すより、「読め」の一言で終わらせるのが正しいような気がする。どんな美辞麗句を尽くそうと、絵とストーリーとポーの瞳の雄弁さには負ける。文庫に収録されたものを改めて読み直してみて、不覚ながら涙が出た。連載時250万乙女の一人だった皆さん、本屋で心が叫ぶ「懐かしい!」コールを無視するもんじゃありませんぜ。
 集英社文庫全3巻、りぼんマスコットコミックス全6巻。