ポーの一族
萩尾望都/講談社・萩尾望都全集



 人の血を汲み、また精気を吸う吸血鬼、人知られず生き続けるポーの一族。消えぬ命と失われる命の孤独にさすらい続ける吸血鬼の少年、エドガーの物語。一部少女マンガ愛好家にはバイブルである。
 この吸血鬼、血を吸わぬときにはバラの花から精気を分けてもらうのだが、私がこの作品で印象に残っているのは沈丁花。エドガーの妹メリーベルが沈丁花に髪を絡ませたのを、金髪美形の王子様にとってもらうというエピソードが、あまりにも奇麗で好きだった。彼女を失った後、エドガーと、彼が一族に加えた少年・アランとの流浪が始まる。共に旅していても、いや誰かと共にいるからこそ、互いに孤独感を覚えてしまう二人。旅の果てが切ない。