ひみつの階段
紺野キタ/偕成社



 少女マンガ。古い木造校舎と寄宿舎のある祥華女学院を舞台に、16・7歳の少女たちの少し不思議な日常をオムニバスでつづっています。
 年月を経た木造の建物には、おおらかな風格と親しみがあります。たくさんの少女たちが貴重な時間を過ごした学校や寄宿舎であればなおのこと。加えてこの作中の建物は、生徒の想いを長い間見つめてきたため、ちょっとしたイタズラを起こします。時に過去と現在の生徒たちの時間が交錯し、時にあるはずのない空間で会えないはずの人たちに会いながら、皆がその不思議を密かに暖かい想いで受け止めている―――それは記憶のベールを一枚かぶせた様に、淡いやさしい風景です。ファンタジックで懐かしい世界。多分現在学生をやっている人より、既に卒業した人の方が、この感覚に溶け込むことができるのではないでしょうか。
 私の趣味を良く知っている友人が、「絶対好きだと思う」と薦めてくれたので、期待して読んでみたら本当に楽しめました。この友人と知り合えた母校も女子校でした。幸い私にとっては懐かしさを感じられる場所です。もう私がいた頃とは変わってしまっていますが、この作品を読みながら何度も思い出して、その居心地の良さにほっとしました。