ご近所の博物誌
わかつきめぐみ/白泉社



 少女マンガ。
 とある農村に、都から博物学者の二羽(にう)さんがやって来る。珍しい動植物と見ればなりふりかまわず、嬉々として木に攀じ登り家に巨大な蔓を這い回らせ未知の現象へ突っ走る彼女に、村長から手伝いを命じられた三稜(みくり)少年は目いっぱい振り回される。けれど夜空の星、道端に生える草にも温かい目を注ぎながら、二人はにぎやかな毎日を過ごしてゆく。
 かすかにファンタジーの香りを漂わせながら、どこかほっとさせる作品。各話の合間に、私たちが常日頃「雑草」の一言で済ませている草のイラストとエッセイが入っていて、どんな草にもそれぞれの楽しみがあるとわからせてくれる。
 大事件が起こるわけでもなく話は進む。けれど読後にしみじみとため息をついてしまうのは、わかつきめぐみさんのマンガ全体に流れる懐かしさのためか。