THE GHOST OF MY LIFE
山田睦月/新書館



 ジャンルは何になるのかいまいちわからない。
 ひどいあがり性のため端役に甘んじている役者ファーン。だがある日著名な映画監督ハロルドに見出され、大抜擢を受けることになる。だがひとつ問題となったのは、契約を結んだ直後、ハロルド氏が殺害されて幽霊になってしまったことだった…。という表題作もとても面白いのだが、私が今回お勧めしたいのは巻末収録の「パラダイス」である。
 戦場から脱走した兵士デレクは、吹雪の中で山奥の小さな村にたどりつき助けられる。そこで出会った医師のカールは、優れた工学の知識を持ちながら、子供たちを相手にのんきとも言える生活を送っている。冬のさなか、村人たちとの交流、新しい生命の誕生と、穏やかで平和な日々が続く。しかし戦争は遠くの国で否応無しに激化していた。
 戦いから逃げ、平和な日常を手に入れながら、まだ捨てられない夢と過去が「彼」を責める。しかし冬が終わり春が来たとき、そこに見出されたのは絶望ではなかった。
 この作者の話はどれも、どこか優しい視点で描かれている。どんな世界のどんな人間も、誰かに許されながら生きていると、そんな風に思わせてくれる作品である。