紀元2600年のプレイボール
大和和紀/講談社



 昭和初期、時代錯誤のはなはだしい山奥の旧制中学が舞台。未だに武士や忍者が存在する青葉藩(藩なのだ)に、東京で育った若様が帰ってくる。江戸の巷で育った彼は、あまりに異なる文化に辟易。だがとにかく順応しつつ、島国根性の青葉武士に活を入れるべく野球部を結成した。監督になぞの外国人骨董屋を迎え、笑いと涙の高校野球がスタートする。
 導入部から甲子園を目指すあたりまではとにかくのどかである。だが第二次大戦へと突っ走る頃、野球すら軍国青年の育成の一環とされてしまっていた時代であり、その波は彼ら青葉の選手達にも容赦なく押し寄せる。最終巻を読みながら、ひたむきにボールを追いかけていた彼らを思って泣いた。