ヨコハマ物語
大和和紀/講談社



 私が最初に読んだ大和さんのマンガがこれだった。明治時代中期、文明開化の横浜。商家の娘の万里子と、彼女の家に引き取られてきた少女卯野の二人を軸に、世界へと向けられる日本人の視線、明治の世相を鮮やかに描く。アメリカ人の教師が教える学校に通い、異文化に触れる機会を得た二人の視野は、憧れと共に世界へと広がっていく。
 万里子は望まぬ結婚をしながらも、実家の商家を継いで横浜商人として立つようになり、やがて夫とも心を通わせていく。卯野は愛した男を追って未だ開拓時代のアメリカへと飛び、人種の偏見や伝染病の危険に晒されながらも、看護婦として自分の位置を作り上げる。発展とそれに置き去りにされる人々が混在する中、辛苦を共にする伴侶を得て、なお前へと走る彼女達がとても美しい。