札幌ペニーレーン24でのライブ。私は札幌の三月=まだ雪解けしていない・寒いという思い込みがあったのですが、近来まれに見る暖冬のゆえかはたまたただの勘違いか、一部道路わきや公園を除いて雪は残っていませんでした。ライブハウスの上の階の倉庫と思しき部屋で入場行列。…やっぱりちょっと寒かったかな。座席はパイプ椅子で、普段はスタンディングの多い会場なのかと思いました。
谷山さんの富良野におけるチャペルコンサート、ならびにその帰路の札幌コンサートはだんだん定着しつつあるようです。谷山さんは白っぽいタートルネックのロングワンピースに、オレンジのジャケット、アイボリーの靴と、どことなく春らしい装い。防寒対策の服装っぽく、花粉症か鼻かぜかと言う感じで大変だったようです。そんなところに春を感じるのも何かという感じですが、次の春の歌で気を取り直しました。意外と歌詞に「春」と入るのが少ないそうですが、春めいた季節感を感じるものは多いと思います。ピアノ一本のシンプルな伴奏は原点ですね。お声も段々と調子が出てきた感じ。
「今日って101人コンサートだっけ?」と谷山さん。違いますけれどリクエストはある。今日が誕生日の人、と募られましたがどなたもいらっしゃらず、「じゃあご両親がお誕生日の方」…もゼロ。「おじいちゃんおばあちゃんがお誕生日の人」、がやっとヒットしました。今おひとりは「名前が琴似(ペニーレーンの住所)に近い人」。それぞれ「ハーブガーデン」と「銀の記憶」がリクエストされました。照明さんへの指示は、「風邪の人に気をつけてね、という歌です」「物憂げな冬という感じ」。この指示で的確に作業できたらテレパシストか相当な詩人だと思うのは私だけでしょうか。
2曲だけかと思っていましたら、ここで改めてリクエストが取られました。こちらは特別形式で、「リクエストしたい人」という問いに対し、最初と2番目に手を上げた人が権利獲得。「私じゃない月の私」の解説、「わりと都会で月夜の感じ」これは色とか風景はやりやすそうですが、ちょっと違うような。「クルル・カリル」は「童話のような感じ」…漠然とし過ぎでは。毎度突込みを入れつつ聞いてしまいますが、曲の印象を一口で言い表すのって確かに難しいですよね。以前谷山さんも、自分の曲をどう言って良いのかわからずインタビューであせった話などをエッセイで披露されていたように思います。
ここでようやくAQさんが登場。帽子の先には昨年大ブレイクの「らーめん天使」が…。こうして各地に布教していらっしゃるんでしょうか(しみじみ)。続いては切実なピアノに切るようなシンセが美しい「はだしの君を僕が知ってる」。これは友情ソングか? という疑問で舞台上が悩んでおられましたが、私は友情を突き抜けた無償の人類愛の歌だと思ってます。生で聞くとひとしおです。これだけ胸に迫る励ましの歌はそうそうない。こういう人がこの世に存在していてくれたら、それが友人でも恋人でも、生きていく価値が倍増すると思うんです。…というようなことを考えるのは曲が終わった後で、最中はひたすら聞きほれてました。どうもこの日は目を良く閉じてしまって(寝ているわけではない)、メモにちっとも照明のことが書けず。うぬぬ。
28枚目の新譜のお話。レコーディング中のスタッフさんの話や歌の背景などについて。「かたつむりをおいかけて」は、スタッフの人に「恐怖の催眠ソング」と言われてしまったそうですがものすごい納得。不眠症の人に勧めたいと思ったくらいですもの。「星より遠い」は、「エンジニアのアシスタント見習の20歳の人を泣かせた」というので谷山さんはとても嬉しそうでした。「学びの雨」はアフガニスタンの子供たちのインタビューを見て作られた曲だそう。学校に行きたいという回答があり、「向学心も欲ですが、良いですよね」とのこと。本当に染み入るように前向きになれる歌です。
続いてのMCは「ロード・オブ・ザ・リング」コーナー。谷山さんどはまってらっしゃいます…。私は1巻最初の数行で放り出した経験者(15年くらい前ですか)ですが、映画が来るので基礎知識だけはあり、おかげで多少ついていけて嬉しかったです。三国志のブームとはまた別物なんでしょうか。続いて「エネルギーを使う曲」。これは確かに…。「Elfin」は少しキーが高めで切実な印象のアレンジ。王国は照明が暖色系で、ちょっと珍しい印象でした。
最後に夏にある幻想図書館の予告が。朗読劇とコンサート、という形式になるそうです。会場は「浅草?」「新宿?」…正解は新大久保。楽しみです。ここでちょっと連想したのか、谷山さんがスタッフさんとの雑談を披露。「アシスタント見習のひとが三国志オタクなんだけど、なりたい人は水鏡先生なんだって。でね、雑誌の編集の20代の女の人が、なりたい人はアリスのお姉さんなんだって。最近の20代は疲れてる?」…確かにどっちもほとんど動かない人かも。実は私も20代(最後)でしたので、「結構疲れてるかも…」とちょっとかんがえてしまいました。本編最後の曲は、最後に聴くと「余韻に浸りたいけどがんばって帰るぞー」という気持ちにさせるためのお気遣いなのかも。
アンコールのMCもロードオブザリング。映画見に行くつもりでしたが、ほんとにとっとと行かねば。最後は「銀河通信」。ひとりで札幌のホテルのシングルルームに帰る今日、ほんのり温かい歌をつれて会場を出ました。ありがとうございます。