納期まであと一ヶ月という切羽詰った状況の中、同僚の好意に甘えて助けられながらの参加。今回ほど「仕事どうしよう」と思いながら来たコンサートはありません。でも一緒に来てくれた姉とともに、氷雨の京都の観光はしっかりやってきました。…それにしたって寒かったなー。
アートコンプレックス1928は、古いビルの上階にある、白い内装の落ち着いた雰囲気のライブハウスです。今回の弾き語りソロツアーは、参加できる日がこの日だけで、どうやら選曲が日替わりらしいことをあとで聞いて悔し涙に暮れました。行けるもんなら全部行きたかった…! あの曲とかこの曲とかいけない日に演奏されてしまったらどうしよう、と思って、他の方の書かれたコンサートレポートが読めません ^_^;) 情けない話だ。おかげでこの日の意気込みはひときわすごかったです。我ながら。
入場もスムーズに行き、時間どおりのスタート。壁がコンクリ打ちっぱなしの上に天井が高いので、とても音がよく響きます。1曲目は「窓」。途中風で歌詞カードが飛んでしまったのですが、危なげないスタートでした。演奏終わって谷山さんが「おさえるものください」と業務連絡。スタッフさんがこっそり譜面おさえを持っていらしてました。「窓でよかったー」と谷山さん。よくやる曲なので、コードも歌詞も覚えていらしたらしいです。「フルサイズのコンサートを一人で弾き語りでやるのは31年ぶり」という割にはリラックスした様子です。全部好き勝手にできるからかな? 前にやったときはコンサート自体なれてなくて、演奏→曲の名前を言う→演奏…の繰り返しだったそうです。今のまったりしたトークはご本人の努力の賜物でしょうか ^_^;) 「会場の雰囲気が学校の講堂みたいで、「窓」って感じ。音が響いてすごく気分が良い」と会場もお気に召したご様子。会場に来てから曲を決めているそうなのですが、それにしては余裕のある演奏です。リクエストできたえていらっしゃいますしね。
ご当地ソングを何曲かということで、アートコンプレックス→「アーク」、会場が三条にあるので「三丁目」…うーんうーん。しかし「すずかけ通り」をピアノ弾き語りで聞くのはなんとも贅沢な気分です。拍手がまた天井に響いて気持ちいいの。谷山さんも嬉しそうです。続けて2月22日は猫の日なのだそうで、猫にちなんだ曲。「猫の鳴き声なら28ですよね」と首を傾げる谷山さん。ここでチャレンジコーナーその一。「猫の森には帰れない最後までやってみようバージョン」…ピアノだけでやったことなかったんですね。練習もされたんだそうですが、イントロと後奏でとちってしまいました。でも苦笑と一緒に最後までたどり着かれて、拍手がすごかったです。「完璧でしたね!」との言葉が爆笑を呼んでいました ^_^;) 次回チャレンジしますとのこと。楽しみ。
最初のリクエストも「名前がねこに近い人」からとられました。のださんがおられましたが、のずえさんとのざわさんに取られて残念。あっさりふられたかねこさん、一考の価値はあったと思いますがこれまた残念。「会いたくて」は意外にピアノ一本と言うのが似合う曲だと思います。歌のシチュエーションにあってるからでしょうか?
リクエストは2曲かと思ってましたが、この次もリクエストコーナー。ここまで苦労してきた人、というお題目でしたが、これが「何を基準に苦労と言うか」が曖昧になってきたので企画倒れ。時間か距離か健康か仕事状況か、という区別は確かにつけづらい。結局茨城と千葉からいらした方がいたということで、お名前が「いばらぎ」「ちば」に近い人ということになりました。茨城に近い人はいのうえさん、千葉に近い人はたにもとさんがゲット。たにもとさんは隣席の人と打ち合わせしてリクエストなさってました。しかしリクエストではみがきがくるとは思わなくてびっくり。とても短い曲なのでなおのこと。リクエストされたかた、タイトルを「はみがきしましょう」とおっしゃってましたが ^_^;) これから森へおいでに移行すると、明るい現実的な世界から一気に湿度の高い幻想的な世界に飛ぶので、ギャップが激しくて面白かったです。
「全20曲入り、プレゼントにも最適」と新譜「そっくりハウス」の宣伝をされる谷山さん。みんなのうたコーナーは「またかと思われるかも」と気にされてましたが、何度聞いても良いもんは良いので何度でも! 「恋するニワトリ」は明るいメロディラインですが、それだけに演奏のアレンジがダイレクトに響く曲だと実感。正直言って、ピアノ一本のほうが他の音が入るより私は好きです。「まっくら森」はイントロと間奏のピアノが際立って美しく、色々とくたびれていた私はほんとに泣きそうになりました。「そっくりハウス」はもう、現実に帰ってこなくていいぞーと言われているような気持ちで。んなわけなかろーと自分に突っ込みを…コンサートが終わってから入れました。はい。
続いては「大曲ぽいのを3つ」…それは嬉しいんですけど谷山さん。「仇」のストーリー、各方面から是非と望まれていたそれを本邦初公開! なんと「縄文人に攻めてきた弥生人」の歌だった! …ってなんですかそれー! アンケートなどでは平安貴族の歌(光る車が牛車)と言う意見が多いとのことでしたが、私の印象だとそれもちょっと違いますー。といいますか、私は東欧のイメージで聞いてました。あえて日本に限定するなら、天智天皇と倭姫皇后のイメージが近いっちゃ近いですがこれも違う。じゃあ何といわれると…ああ思いつかん! しかし弥生人だとするとヒスイの首飾りって勾玉? 髪をみずらに結った大王が先住民の姫君に求愛に行くのかー…駄目だこれ以上考えちゃいけないわ。続けてチャレンジコーナーその2は「約束の海」! うわあうわあ、聞きたかった曲だー。会場からもどよめきがあがりました。何がチャレンジかと言うと「キーがEフラットマイナーだから」だそうです。「仇」でピアノと言えば、すみだトリフォニーでの倉田さんの名演奏が思い出されます。なんと言うか戦う曲ですね。あの解説を聞いた後でも、私の頭の中の風景は、栗色ロングヘアの美少女が月下の崩壊した城跡にたたずんでいるところに4頭立ての馬車が来る…と言う状況から動かない。縄文時代に思い入れがないからか…。SORAMIMIはシンプルバージョンで、ということでしたが、この曲も歌詞の世界にシンプルなアレンジがすごく似合います。「約束の海」、ばんざい、チャレンジなのに全然とちりませんでしたー! ありがとうございます谷山さん、この歌は私にとっては5本の指に入る励ましソングなんですっ。なんだか聞くだけで突っ走りたくなるの。
弾き語りコンサートをはじめるまで、色々ご心配なことがあったそうですが、やってみると意外なほどコンサートが楽しいそうで何よりです。他に変わったこととして、「ピアノの練習をするようになった」と谷山さん。現在の目標は倉田さんで、最終的な目標はホロヴィッツだそうです。もう亡くなられた方ですが、私ですら名前を知っている、神様のようなピアニストさんです。「ピアノの前に来て座って、弾き始めるまでが芸術。「何かをしよう」と思っている間、誰かに聞かせようと思って演奏するのは凡人なんだそうです。私の上には優れた凡人が一杯いるわけで…目標が遠いですね」と苦笑なさっていた谷山さん。私は谷山さんを凡人とはまるで思わないのですが、それでも高い目標があるのはすばらしいと思います。(いやもう真面目な話…私はあんまり向上心がないので)
カントリーガールのロングバージョンで本編終了。アンコールのDOORで、ほんとに肩がほぐれた思いでした。鳴り止まない拍手の中、幸せに浸りつつアンケートを書きなぐっていましたら、客電が落ちました。ダブルアンコール成功。翼からということで「星より遠い」と「学びの雨」どっちにするか、簡単にアンケートを取ったところ、学びの雨のほうが微妙に拍手が多かったようでそちらへ。いつも思うのですが、仕事や対人関係や企業間の力関係でしんどい思いをしているときに、あまりにまっとうで正しい歌を聴くとどかっと泣けませんか〜。学びの雨、効きました。
いつもよりちょっと饒舌な印象のあったこの日の谷山さん。アンコールのMCで、「空みたいな自分と梅干みたいな自分がいて、行ったり来たりしています。空も梅干もその間も歌にします」という趣旨のことを話されていて、なんだかとても力づけられました。結局自分はいろんな人のおかげで生かしてもらっているんだと、改めて認識できたコンサートでした。仕事がはかどるようになったわけでもございませんが ^_^;)