神に感謝したくなる企画。みんなのうたの曲を谷山さんが歌う! 主催の角野さんは音楽ジャーナリストで、お勧めの音楽やアーティストを紹介するライブ企画「歌暦」を続けておられます。その4回目のゲストとして呼ばれたのが谷山さん。会場が狭いのでチケットは争奪戦でした。通販分は初日でソールドアウトしたとか。
渋谷の「7階」は、キャパシティ100超クラスの小さいライブハウスです。ビルの1階からフロアに上がる手段が、定員5〜6名の小さいエレベーターのみだったことと、行列がかなり崩れていたため、入場は手間取りました。整理番号順になっていなかったところもあったようで、入場後難しいお顔のお客さんが何人か…。今後の課題として欲しいと思います。ライブが楽しくても出だしでけちがついたら悲しいですものね。
入場後、チラシとともに歌詞カードと「みんなのうた」に関するアンケートが配られました。歌詞カードは「おもちゃのチャチャチャ」と「クラリネットをこわしちゃった」の2曲。アンケートは、番組と谷山さんへのメッセージなどを記入。トークで使われるため、後の休憩時間中に回収されました。
ステージ上はピアノが一台とトーク用の椅子が備えられていました。まず角野さんのご挨拶の後、谷山さんがご登場されてしばしトーク。この企画のきっかけは、CDジャーナルの記事で角野さんが谷山さんにインタビューされた際、お二人のお好きなみんなのうたの曲が一致して盛り上がったことだそうです。「知っている人に会ったことがなかった」と言うその曲のタイトルは「雨の遊園地」、私は知りませんでしたが、そうした懐かしい曲を知っているお仲間にめぐり合えた時の喜びはとてもとてもよくわかります〜。
谷山さんがピアノの前に座り、1曲目はみんなのうたから「恋するニワトリ」。続けては「変なおじさんといいかげんなおじさんの歌」2曲。みんなのうたにはこの手の曲が多かったそうなのですが、残念ながらどちらも記憶にありませんでした ^_^;) 続けての2曲は民謡ものから気に入ったもので、「川で歌おう」はインドネシア、「花祭り」はアルゼンチンの曲だそうです。谷山さんは「花祭り」を仏様の誕生日のほうだと思っていらしたそうな。
5曲目のあとのトークコーナーでは、みんなのうたのダイジェストVTRが流れました。NHKのみんなのうたイベントで流れたものだそうですが、私は初見でしたので楽しく拝見しました。順に「大きな古時計」「クラリネットを壊しちゃった」「トレロカモミロ」「北風小僧の寒太郎」「切手のない贈り物」「メトロポリタン美術館」「きっと幸せ」「WAになって踊ろう」。大体年代順に並んでいたようです。このなかで「トレロ〜」は私の記憶になかったのですが、同行の姉と先輩は覚えていたそうで、数年の差が大きいと思ったことでした。通常のライブでは感じない、自分の記憶と勝負しているような錯覚があって興味深かったです。全年代向けに作られた長寿歌番組の侮れなさを思い知った瞬間…。
谷山さんの歌のVTRは流さないのかしら、と思っていましたら、続く「まっくら森」はテレビのあの秀逸なアニメーションが流れました。惜しむらくは演奏と字幕が合ってなかったんですが ^_^;) そのあたりは脳内で意識をすりかえつつ補って、しばし幻想の世界を楽しみました。続いては有名な歌2曲。番組開始のはるか以前に作られ、教科書でもおなじみです。「月の砂漠」は、「どうしてこんなことをしているのかわからない歌」…言われてみれば確かに、旅する貴顕お二人はどこから来てどこへ行くのかわかりませんね。でもそのわからなさが魅力になっている気もします。「花」は個人的に、日本で作られた楽曲の中で屈指の美しい曲だと思っています。谷山さんのソロはピアノもシンプルで美しく、堪能させていただきました。
「クラリネットをこわしちゃった」(ずーっと「クラリネットが壊れちゃった」というタイトルだと思い込んでいた…)は、歌詞が配られたこともあり合唱可能でしたが、タイミングを計るのが難しかったようで、客席の人数に比べると声はそんなに重なってはいませんでした。ですがMCの雑談で、「花」を合唱した経験のある人が多いという話になり、ためしにと客席に歌を促したところ、歌詞も譜面もなしで見事なハモリを聞くことができました。ほんとにポピュラーな歌なんですね。
ここで第1部終了。谷山さんは狭い客席を縫って退場され、休憩時間に突入。BGMにEPOさんの歌う「みんなのうた」にちなんだ曲が流れていました。20分ほどの休憩の後、角野さんのトークから再開。「ステージ上で低い椅子に座っていては角野さんと谷山さんの顔が見えない」という意見があり、椅子が高めのものに変更されました。「みんなのうたに推薦したい曲」として、アンジーの「銀の腕時計」が映像つきで紹介されました。この日演奏された曲で一番長かったのはこれじゃないかしら。他の曲は長くても3分強だったような。
谷山さんが再登場され、本格的に第2部がスタートしました。まずは2曲続けてご自分の持ち歌から。「そっくりハウス」も微妙に字幕のずれる映像がつきました ^_^;) 続いては影響を受けた歌。「雨の遊園地」はライブ冒頭のトークにも出ていた、角野さんとのお話で盛り上がった歌ですね。私は初めて聞きましたが、さびしげで綺麗な曲です。「小さい秋見つけた」は、ダークダックスの印象が一番強いですが、女声ソロだと…なんだか大正から昭和初期の日本家屋という印象が。間にMCが入りますが、多分「ピエロのトランペット」も影響を受けた曲に入るんじゃないかと思います。これは谷山さんには思いいれのある歌ですが、この歌を知っている人に会ったことがないそうです。「イタリアの不条理もの」で、手品師(魔術師だったかな?)がサーカスやピエロのトランペットを消してしまい、ピエロはずっと消えたものを探している―――という歌。確かに谷山さんテイストな印象を受ける歌でした。
ここでまたトークコーナー。冒頭で配布・回収したアンケートの読みあげがありました。細かく内容をメモしていないのですが、谷山さんファンで谷山さん目当てでライブにいらした方でも、多分成長過程のどこかで「みんなのうた」に接する機会があり、それぞれに思い入れがあったことと察せられます。
昨年末からブームが続いているので「やらなくていいかもと思ったけど」とコメントされましたが、やっぱり「大きな古時計」はないとさびしいです ^_^;) 「誰も知らない」は最初おっしゃったとき歌のタイトルだと思いませんでした。そう言うタイトルです。「フニクリフニクラ」は「歌詞の間抜けさが適度で好き」とのこと。鬼のパンツの替え歌の方が有名かもしれないですね。おもちゃのチャチャチャのあとで説明がありましたが、世界最初のCMソングなんだそうです。登山鉄道の。…てかベスビオ火山て登れたの? 知らなかったなあ。
「おもちゃのチャチャチャ」は歌詞カードが配られましたので合唱です。クラリネットよりは歌いやすい曲だと思います ^_^;) アンコールは「用意していなかった」とのことですが、みんなで歌える歌をということで、「遠足で歌おう曲」の代表「おおブレネリ」。歌詞カードもないのに大合唱でした。
久々に、思う存分ノスタルジーに浸れる企画でした。当たり前ですが普段谷山さんに、ご自身の歌以外で思いいれのある歌などをお聞きする機会はありませんので、その意味でも貴重な体験だったと思います。