谷山浩子 猫森集会 Aプログラム1日目&2日目

03/10/02 新宿スペースゼロ Open18:30 Start19:10 End21:10
03/10/03 新宿スペースゼロ Open??:?? Start??:?? End21:10(会場到着20:15)
出演:谷山浩子(Pf,Vo), 石井AQ(Syn), 板倉文(G), 伊藤サチコ(Vo,Key)



曲目

  1. もみの木
  2. 空に吊されたあやつり人形
  3. わたしは淋しい水でできてる
  4. 水玉時間
  5. 渚のライムソーダ
  6. さかなの言葉
  7. SAKANA-GIRL
  8. 小さな魚
  9. さようなら木
  10. お昼寝宮・お散歩宮
  11. ウサギ穴
  12. ダイエット
  13. 空からマリカが
  14. 冷たい水の中をきみと歩いていく
  15. 時計館の殺人
  16. 月見て跳ねる

アンコール

  1. ここにいるよ



 例年初日は緊張している印象を受ける谷山さん。この日はオレンジのセーターに、黒地に白くスパッタリングしたような生地のフレアースカート、黒いヒールの靴でご登場。四方に一礼の後ピアノに座り、まずは「もみの木」。やっぱり微妙に緊張してらっしゃいます。「Aプロはいわゆる代表曲は少ないけれど、メロディの上位3曲に入ってるやつが全部ある」と谷山さん。そんなランキングあったの!? とびっくりいたしましたが。続く2曲のセレクトは「タイトルの長い歌」で、どちらも新譜から。このうち「わたしは寂しい〜」がメロディランキング入りを果たしているそうです。谷山さんの曲のメロディラインは基本的にどれも美しいと思うのですが(意外性があるとか怖気が立つとかもありますが)、その中でもご本人お墨付きの極めつけということでしょうね。私もこの曲は大好きです。「空に吊るされた〜」が段々精神的に追い詰められていく歌なので、続けて聞くとなおのこと耳にしみます。でももしかして、歌詞…1箇所飛ばしてませんでしたか谷山さん ^_^;)

 白状しますと、私は板倉さんは男の方だというのは存じていましたが、お名前は「ふみ」さんだと思っていました。「ぶん」ですね。ぶんぶんぶん。覚えました。ピンクのシャツでご登場。いかにもギターで食べてます、という印象のお方です。谷山さんとは水玉時間のアレンジでご一緒されたのが最初だそうで、「隙間の多い(?)美しいアレンジ」と谷山さん。高田みずえさんへの提供曲と河井奈保子さんへの提供曲を続けての演奏です。水にちなんだ選曲だったのかな? その延長と言うわけでもないと思いますが、続く「板倉さんとお話のコーナー」では、なぜか趣味の園芸の話から、板倉さんがたたみにキノコをはやした話に移行して延々と…。板倉さんがピアノの倉田さんと同期だとか、ねむ音というところで活躍されていた話とかも興味深かったのに印象が残るのはキノコ。うう。

 続けては「生臭いコーナー」。お魚にちなんだ曲です。「魚の言葉」のギターがすごかった…。うまく表現できないのですが。ぎ・ん・ぎぃぃぃいいいぃいぃんんん・ん、と。音が音のまま文字になって地から目線のあたりまで(絶対それより上に行かずに)うなっているかのような…。ああギターが人語を解しているー、何ぞと思っておりました。人が演奏してるんだからありうるわよね、とあとで自分の感性に慰めを入れましたけれども…うまくいえません。ボキャブラリーが欲しい〜。「SAKANA-GIRL」は気持ち悪さが増えていると言うか、ストーカー対策法が成立してる世の中でよかったわ〜というかなんと言うか。「小さな魚」は打って変わってメロディを追いつつ、やっぱり一筋縄で行かないんですよね。なんと言えばいいのか。すごい世界だった。

 続いては更なるゲスト様ご登場。伊藤サチコさんは、谷山さんと無理なく親子のお年だそうで、さすがにお若いです〜。でも緊張している風もなくキーボードの前へ。トークでは地元の秋田のお祭りについてお話してくださいました。おにいさんがお祭りでなまはげをやってらしたそうです。いいなあなまはげ! 一回生で見てみたいんです。お兄さんがやってるなんていいなあ。トークに続けて伊藤さんのオリジナル曲「さようなら木」をソロで。せつないけれどさわやかな印象の曲でした。お声は前に出すぎずされど下がりすぎずと言う感じで耳に気持ち良いです。続けてのトークはつげ義春さんのお話で盛り上がりをみせていました。ステージ上全員ファンなんだそうです。伊藤さんお若いのにすごい…。

 歌える女性のゲストさんがお見えというので、実はとっても楽しみにしておりました、お二人のコーラス。谷山さんはこのあたりでは完璧に緊張がほぐれてらしたようです。選曲も来た来た来た来たーっという感じです。これだけコンサートに通ってるのに、1回も生で聞いたことのなかった(要するに演奏されてない)「お昼寝宮お散歩宮」。「うさぎ穴」は、幻想図書館の曲を女声コーラス版にアレンジしたもので、これまた美しくどこかかわいらしく。ソロにはソロのよさがありますが、ハモリの美しさってまた格別なんですよね。伊藤さんのご登場はここまででしたが、ぜひまた参加していただきたいものです。続く3曲のうち、「空からマリカが」と「冷たい水〜」がメロディトップ3の残り2曲だそうです。ダイエットは「ライブで歌うと気持ちいい部門」に入るとか。それはもう納得。新譜の発売ごとに入れ替わりがあると思いますが、出来ればこのあたりのランキング全部発表していただきたいです。面白そう。

 最初に言われたとおり、いわゆる代表曲というのとは違うラインナップの曲ぞろいでしたが、このあとの曲のタイトル…聞いてちょっと固まりました。谷山さん曰く、「いきなりやっちゃうとBCDプログラムが終わっちゃうけど、ぱーっと」…ぱーっとって、ちょっと感覚が違う気がするんですが。うわー、「時計館」と「月見て跳ねる」!? うわあうわあ、どうしようどうしよう―――ってどうもしませんが、なんつーかこう、人には誰しも「この曲を聞くと突っ走らずにいられない曲」ってのがありますよね! それがまとめて二つ来ちゃったんですよ!(ちなみにベスト3中残る一つは「約束の海」)これを板倉さんの行っちゃってるギターとともに聞くなんて、ちょっとすごい。すごすぎた…。たまに自分の心臓疾患疑いたくなります(そうでなくてもちょっと心悸亢進ぎみだっつーに)。「時計館」から「月見て跳ねる」へ、後奏からギターがつなげたのですが、これが「どこに行くんだ」という重層から突き出される音の連なり。曲に入ってからも文字通り音が跳ねてもうもう。アンケート書く手が震えてました。アンコールが「ここにいるよ」、良い選曲です。クールダウンしつつ自分の神経を見つめなおす気分だった…。

 で、2日目なんですけど。初めは行かない予定でした。いやあのね、それなりにそれなりに、忙しい期間だったんです。オールリクエストは両日取るけど、Aプログラムは1日だけ。行かない日に仕事のウエイトをかけたので、順当に終わっても開演時間に間に合わない。まさか客先からダッシュで地下鉄に乗って当日券買って後半一時間だけ聞くなんてことは、…しないと思ってたんですこの日までっ。でもラインナップが私を蟻地獄にはめた…! ああまさかこんなことになるなんてでもあの曲をまとめて生で聞けるチャンスなんてないわせめて最後2曲だけでもでもでもでも「すみませーんこのデバッグ月曜の午前中でいいですかー」いいんだないいのねよし行こう(10月3日午後7時客先にて心境を記す)…行ってよかったです。逆にもし2日目だけ取ってたら、きっと「なぜ昨日来なかったこの曲が聞けると知っていれば昨日来ていたのにいいいいい」と絶叫していたことと思われます。

 当日券売り場で、係りの人当たりの良いお兄さんに通路脇の席を売っていただきました。選べるほど席が余ってるなんて、なんてもったいない。伊藤さんが「さようなら木」を歌っている最中でした。曲が終わってトークの最中にだかだか歩いて(どうも静かに歩こうとすればするほど足音がする。なぜだ)着席しました。ファミコンの話で盛り上がってました。伊藤さんがお好きなんだそうです。ファミコンです。プレステ全盛、もはや世代を3つも4つも飛び越した感のある現代に、ファミコン! 素敵だ…!(感心) 谷山さん曰く「このあたり時間がゆがんでるよね」とのこと ^_^;) ファミコンに精通している20代前半以前の女性は確かに珍しいかも。麗しいコーラスに間に合ってほくほくでございました。

 選曲もトークも基本的に昨日と同じようでしたが、この日記憶に残ったのは「冷たい水〜」のあとのMC。板倉さんは歌詞に反応するミュージシャン、とのこと。「AQさんは理性的成分。文さんは生理的成分で抽象化して音にする。ネコさんは生理的だけど、猫の曲なら猫の音をそのまま出す」だそうです。理解しているとは言いがたいですがなんとなく納得。

 で、この日も絶品だった本編ラスト2曲。うまくいえないのが悲しいですが、やっぱり昨日とアレンジががらりと変わっていました。「時計館」で壮大に終わって後奏をつなげる、という展開は同じ。でも音がぐさぐさ突きだされる感じではなく、かといって媚びるでもなく、とても自在な演奏でした。…えー、コンサート記録メモに「自在な演奏」って書いてあるんですが(正しくは「じざいなえんそう」…あせってメモするからひらがなばっかり)。自分で書いたんですが。…何考えてたんだろう自分。と、とにかく演奏聞いといてよかったです〜。ああ心臓をいたわらねば…。

 最高の幕開けとなりました今年の猫森集会。こんな風に趣味に走った選曲のコンサートなんて、一ファンがオールプロデュースなんて状況でもない限りないと思ってました〜。理性狂気が紙一重の、美しい世界で遊んだ気分です。ありがとうございました〜。




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