谷山浩子 猫森集会 Dプログラム1日目

03/10/09 新宿スペースゼロ Open18:30 Start19:00 End21:15
出演:谷山浩子(Vo,Pf), 石井AQ(Syn), 渡辺等(B,etc), 拝郷メイコ(Vo,Cho,Key)



曲目

  1. 真夜中の太陽
  2. ピエレット
  3. MOON SONG
  4. 意味なしアリス
  5. よその子
  6. そいとげよう
  7. 赤い靴
  8. 月と恋人
  9. 会いたくて
  10. 花野
  11. 神様
  12. 王国
  13. 学びの雨

アンコール

  1. ドッペル玄関



 Dプログラム1日目。翌日が休日でしかも最終日ということがあってか、客席にはちらほら空席がありました。演奏はもちろん遜色ございませんでしたので、もったいない感じです。

 時間どおりの開幕。谷山さんは青ベースのアーガイルに似た模様のセーター、白いスカートにかかとの低めの茶色いくつと言うご衣裳でした。初っ端から「真夜中の太陽」。ライトがスポットの白からオレンジへと段々移り変わっていく情景が美しく、まるで始まると同時に終わるかのような錯覚 ^_^;)  AQさん登場の後は「ピエレット」「MOON SONG」と続きます。「MOON SONG」のほう、照明は床を利用。舞台の中心にスポットライトのように丸く光る満月が照らし出され、曲が進むに連れ七曜紋の様に姿を増やしていく…。曲のムードと相俟って幻想的で美しかったです。3曲目終了後渡辺さん登場。ベースの低音に支えられ、不条理な雰囲気(?)をいや増す「意味なしアリス」。大作「よその子」は、何をかいわんやの切実さをかもし出して迫力の8分半でした。前日オールリクエストのぶっつけバイオリン参加版はどこか切ない雰囲気でしたが、この日はラスト部分の腹をくくった印象が強かった感じです。

 MCは「等君とお話しましょうコーナー」で、もっぱら楽器のお話。特注という12弦フレットレスギターは、誰に見せても「なんて難しい」と言われる代物だそうです。フレットとは(広辞苑広辞苑…)「マンドリン・ギターなどリュート風の弦楽器の棹についている勘所の横桁のこと」(よけいわからんぞ広辞苑)で、要するに演奏中左手で弦をおさえて引っかけて音を固定する出っ張りのこと。フレットレス。つまりフレットがない。ということは…うわあチューニングどうなってるんだろう。「体調によって変動がある」とおっしゃる渡辺さん、「それは楽器の体調?」と谷山さんに聞かれて苦笑なさってました。実際の演奏はこのあと「一文字」縛りの曲のなかでということで、期待が高まりました。実際の演奏は「仇」にて。

 漢字一文字と聞いてとっさに浮かんだ「扉」、大正解。「卵」は〜、生で聞くとほんとにほんとに怖い歌で…。自己完結というかひきこもりというか、なんでシンセとベースと合わせて谷山さんの生歌で聞いてるのに、気温が下がったような気がするのかしら…。多分私の生理的恐怖に直結してるからだと思うんですが。私は狭苦しいところはそれなりに好きですが、密閉されている空間がとても苦手なのです。何せ出だしが、卵の中でじーっとじーっとしてる間に死んで腐る…うわああ想像したくないいいい。ということで私にしてはめずらしく、ちょっと身構えつつ拝聴いたしました。で、フレットレスギター活躍の場。来ましたわ「仇」です! 私は渡辺さんの右後方にいましたので、演奏しているご様子は何気ない風に見えましたが、前方の席にいらした方に実況リポートしていただきたかったところ。たたきつけるような悲愴なピアノとキンと要所を抑えるシンセに、音の真中を捉えているかいないかというアンバランス一歩手前のギターが絡む。曲そのものの持つ力と、演奏者の実力が戦うような曲だと思うのですが、ギターはとってもぴったりでした。拍手も万雷。

 続けてはお若いゲストさんで、拝郷メイコさんのご登場。10ヶ月で150回と言うものすごい数のライブをこなされたとかで、どこから見ても落ち着いたトークと演奏でした。キーボードを弾きつつの歌は「そいとげよう」。くっきりした印象のお声です。MCは初回の伊藤サチコさんに影響を受けてか、マンガの話で盛り上がりました。「HUNTER×HUNTERが面白い」とか、漫画家のちば兄弟のこととか、がらかめ(ガラスの仮面)は今どうなってるのかとか…たぶん今日は、マンガに興味のない人でも半分はわかったことと思いますたぶん。続く2曲は「同テーマ新旧対決」でした。止められない恋愛と、「まわる」がテーマ。Aプロの伊藤さんの時にコーラスに聞き惚れたので、今回も本当に「二人で歌う歌」が楽しみでした。ハモりが美しいんですよとっても! 拝郷さんのお声は完全にソロ向きかなと思ったんですが、どうしてどうしてさすがプロ。「月と恋人」の掛け合い部分なんてほんと絶品でした。このあと退場されてしまいましたが、もう何曲かお二人で歌ってほしかったな。生コーラスつきで聞きたい歌はまだいっぱいあります〜。

 舞台の上に最初から鎮座していて、人目を引いていた渡辺さんの楽器。真っ白装飾的、清里あたりで飾られていそうだということで「清里一号」と命名されているとか…チェロなのに胴の前後が透けていて大丈夫かとも思ったんですが、聞くと楽器として成り立ってました(当たり前か)。続けてはもう一目瞭然、テーマは「2文字」。多分やらないと思っていたインスト曲、「花野」をやってくださって…!(握りこぶし)落ち着いた空気で美しかった…(うっとり)続けてはきっとやると思っていました「神様」。で、予想は「約束」だったのですが、外れました「王国」です。締め間際にこれが来ると本当に壮大。

 ラストは「学びの雨」。イラクに自衛隊を出すの出さないので世間がかまびすしい昨今に、こういう歌を聴くと「私何やってんだろ」と言う気分にさせられますしみじみ…。ラスト間際にこの曲のラインナップで、ひたすらに激情をアンケートにたたきつけていたところへアンコール。物販のあと、ああ来ちゃったか〜の「ドッペル玄関」。タイトル言った瞬間に会場が「あらららら」という空気になるのはこの歌くらいですね ^_^;)

 かくして私の今年の猫森はおしまい。何年かぶりで最終日に行きません。今年もダブルアンコールはあったのかな。それだけが心残りかも〜。




[谷山浩子] [音楽のページ] [ことのはのもり]