空間読書の会 第一回公演 第七官界彷徨

04/08/08 ベニサン・ピット Open: Start: End:
出演:谷山浩子、大森博史



 朗読パフォーマンスの会。ベニサン・ピットは倉庫を改装したような、どこか無骨な感じの劇場です。尾崎翠さんという、主に大正時代に活動された作家さんの作品から、演劇のような朗読のような不思議な舞台が作られました。
 田舎の少女・小野町子が家事手伝いのために、従兄と二人の兄が住む男所帯に同居する話。彼女はいつか自分の手で小説をものしたいと思っており、第七官界彷徨とはそのタイトルです。兄たちはそれぞれ精神科医と学者。従兄は音大受験準備中。彼らは良くも悪くも趣味の世界に没頭しており、恋愛もその世界を通した視点でしか出来ない人々。そんな中で家事をきりまわし、どこか微妙にずれた同居人たちの世話をしながら、狭い家と人間関係に足をとられていた町子に、ある日小さな転機が訪れます。
 形式としては確かに朗読。台本見ながらやってましたし。しかし分類するなら間違いなく演劇です。谷山さんは主役こみで二役、他の役をすべて大森さんが八面六臂で演じました。
 原作を読まずに行って多分正解。とても谷山さんの印象に合致したお話でした。どこか薄暗い雰囲気のある世相と家、その中で同居しながらも頑なに自分の世界を護り、それが全世界だと思いたがりながら生活する人々―――それにちょっとは染まりながらも、最終的には少女と言う自分に目覚める主人公。途中は天井に開いた雨漏りの穴から星を見る状況だったのに、ラストでは窓が晴れやかに開いていて印象的でした。
 数々入った挿入歌がまた空間を見事に作っていて楽しめました。ブラボーです谷山さん。
 余談その一。絶対知らない曲ばかりだと思って、久々にメモを取らずに観賞しました。余裕があるって素敵…。余談その二。至近距離の席に上野洋子さんと思しき方(多分)がいらしてましたー。




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