聲明コンサートシリーズVol.1「千年の聲」

98/09/14 表参道スパイラルホール Open20:00 Start20:30 End23:00(^_^;)
出演:孤嶋由昌・新井弘順・海老原広伸・京戸慈孝
ゲスト:ayuo(ケルティックハープ他)、上野洋子(アコーディオン、ヴォーカル)
作曲担当:高橋悠治



曲目

  1. 四智梵語讃(しちぼんごのさん)天台声明の古典
  2. 四智漢語讃(しちかんごのさん)天台声明の古典
    • 主催者と高橋氏舞台挨拶
  3. 大いなる死の物語 高橋氏作曲。仏陀が亡くなったときのアーナンダの詩。
    • 舞台入れ替え・ayuoさん洋子さん登場挨拶
  4. 第二次大戦が終わった日僕はここにいた(Where I was the day The Second World War ended)
  5. デモクラシーの王子にであったオフェーリア(Orpheria meets her Prince of Democracy)
    • お二人退場・舞台入れ替え
  6. 云何唄(うんがばい)真言声明の古典
  7. 散華(さんげ)真言声明の古典
  8. 理趣経(りしゅきょう)真言声明の古典



 天台宗と真言宗から2名ずつメインの歌い手さんが出て、それぞれの古典と新作を披露するという試みのコンサートです。当たり前と言えば当たり前ですが、ayuoさん洋子さんファンの人と真面目に声明を聞きに来た人と、客層が見事にばらっばらで笑えました。

 お客さんは大体300人以上くらい。主催者側の予想をはるかに越える人の入りだったようで、本来舞台の一部である通路に座布団と折り畳み椅子を出して臨時の席としたばかりか、実際の舞台の上にまで客席がしつらえられていました。私が最初に座った位置は舞台に至る通路。柱が邪魔で見えないので、ayuoさんと洋子さんのときだけ座布団を引きずって席移動しました。

 最初はお坊様15人で天台声明の古典。なんでもいいけどどうしてお坊様ってああ歩き方だの挙措動作だのが美しいんでしょう…うっとり。

 ただねー、長いんです。とにかく。開始が20時30分で終了が23時というのはまあ仕方ないとして、「大いなる死の物語」は開始から終了まで約50分の長丁場。A4の紙2ページ分約60行の歌詞を延々と(そりゃもうえ〜んえ〜んと)声だけで「語り歌う」。お坊様方皆さん「その場でバリトン歌手デビュー!」と思ったくらい声が美しいんですが(常日頃お経読みできたえてらっしゃるんでしょうね)、床に座布団で足がしびれて大変だったんですよ(って結局こっちの修行が足りないのね…)。どうも畏まって聞いてしまうのでなおさらですね〜。途中4人の方がそれぞれバラバラに声を出すところがあるのですが、ここは声というより音楽で、段々一つの流れに戻って行くあたりはとても綺麗でした。この曲のときayuoさんがケルティックハープで参加されていましたが、こちらも曲を奏でるというよりはお坊様方のお声に合わせてハープを「掛け合わせる」といった感じ。どんな演奏になるかと思ってましたが、お経にハープって似合います。でしゃばらず控えめすぎず、かすかに漂いながら存在を主張するお香のような音でした。

 高橋悠治氏の舞台挨拶より:「声明の新作…千年も続いているものに新作を作るのも大変。声明を音楽だと思う人もいるが思っていない人もいる。声明は声、言葉で仏の言葉を伝えることの一つ。千年経つと美しいが何を言っているかわからなくなるので、今の言葉でわかりやすく意味を持って伝えて、音楽として美しく、言葉として正しく、胸に染み入っていくようなものを作った」(走り書きメモなのでお言葉そのままではありませんです)

 4曲目と5曲目でayuoさんと洋子さんが登場。この長いタイトルの2曲はayuoさん作詞作曲らしい…訳詞なのかな? 原案はアメリカの作家カート・ヴォネガットの文学作品から。1曲目は「Fates Worse Than Death」と「青髭」に出てくる場面、2曲目は「ジェール・バード」に出てくる愛の話だとか。原作の文が解説パンフと一緒に配られました。

 ayuoさんは上が黒・下が白、洋子さんは黒のロングドレス。ど金髪は健在です。1曲目はアコーディオンと、ヴォーカルというよりヴォイスで、お坊様のお経に負けない低音。なんせ高い方の「ド」より低い音しか出さず、歌詞らしい歌詞もなし。ayuoさんの声を下から支えてました。が、2曲目はayuoさんのブズーキも快調で、音域も上から下まで移動し、意外と明るい印象。歌詞は暗いんですけどね〜。

 洋子さんは声明と比べて遜色ない声量、と思ってますが、やっぱりこういう場では少し異質です。なんでこの取り合わせでコンサートやることになったのかな?

 ラストはお坊様21名様で真言声明。紫・緑・黄の袈裟できらびやか。最初2階から登場だったのですが、マイク無しで声がホールに反響してました。ほんとに皆様声が綺麗…。皆様が持ってらした金属製の手持ち譜面台(橙・白・緑の飾り紐付き)が綺麗で、にょうはち(仏壇においてあるコーンと叩くやつに持ち手が付いているもの)が音がよくってうっとり。「散華」で撒いていた香華を拾ってこれなかったのが悔やまれます。




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