柳田邦男
死角/講談社文庫
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撃墜(上)(中)(下)/講談社文庫
 83年の大韓航空機撃墜事件についてのドキュメント。残された数少ない物証や交信記録を丹念に調べ、経験を積んだパイロットたちからの助言を受けて、なぜ飛行機が撃墜に至るルートを飛んだのかの真相を追究する。
『人間の時代』へのまなざし/新潮文庫
 長くドキュメンタリーを手がけてきた作者が、医学や社会と人間との関わりを独自の視点で描き出す。
事故調査/新潮文庫
 事故の予防において「過去に学ぶ」ことがいかに大切かを語る。
かけがえのない日々/新潮文庫
 ドキュメンタリー作家の柳田氏が、取材を通じて出会った人々や音楽について振り返る。
事実の素顔/文春文庫
 1985年頃に週間文春の「社説」として連載されたコラムの総集編。日航ジャンボ機墜落、チェルノブイリと多事多端だった年に、世相を鋭く見詰めて端的にまとめたノンフィクション。その的確な指摘はこの筆者ならではである。
いのち 8人の医師との対話/講談社文庫
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20世紀は人間を幸福にしたか/講談社文庫
 人間をというより、日本人を幸福にしたかという内容。激動の、と冠詞をつけて語られる20世紀。2度の戦争を経て世相が変わり、医学と科学の進歩によって生命の定義すら見直しを迫られた時代である。この本では心理学者・医師・文学者など、各分野で一線で活躍する人々と柳田氏の対話を通じ、20世紀という時代の功罪、ひいては21世紀に持ち越された正負両面の遺産について論じる。特に河井隼雄さんとの対談は、目からウロコが落ちる感じがして面白かった。(2002.08.15)
発想の現場/講談社文庫
 主に科学畑の第一人者を迎えた対談集。出版は20年程前だが、第一線で活動していた人たちの視点と発想、そこからつながっていく未来への展望がとても興味深い。
キャッシュカードがあぶない/文芸春秋
 相次ぐキャッシュカードによる犯罪。スキミングや暗証番号の盗難、たった四桁の数値が他者に知られるだけで残高がゼロになる恐怖。この本の出版は2年前で、当時は被害にあってもその補償は全くされない時代でした。現在は多少補償されるようになっていますが、この本に書かれたような犯罪がなくなるわけではありません。一読をおすすめします。



柳田重宝
特攻/講談社文庫
 世に類を見ない特異な戦術である「特攻」。7000人に及ぶ若い兵士たちをただ「武器」として散らせるに至った経緯を、人の心の動きと絡めて詳細につづる。(01.03.10読了)



山内逸郎
未熟児/岩波新書
 医師の立場から、日本の未熟児医療の歴史と試みをつづる。筆者は未熟児医療の草分け的存在。未熟児の罹患しやすい病気、症状の説明から、それを防ぐために払うありとあらゆる注意、また医療機器の開発のアイデアについてユーモアを交えてつづる。今は「超未熟児」と言われる子供も生き長らえる時代になってきたが、それと同時に現場の医師の悩みも深くなっているようだ。(2002.11.1)



山口嘉之
水を訪れる/中公新書
 世界各国の文化と「水」の歴史を相関的にたどり、現在の水資源開発の状況と問題点に言及する。文化は「水」に応じて変化してきたものだとわかる。



山崎洋子
歴史を騒がせた悪女たち/講談社文庫
 歴史上「悪女」と呼ばれた女性たちの列伝。
「伝説」になった女たち/講談社文庫
 近・現代の歴史や銀幕上で活躍した女性たちの人生を辿る。有名にならない方が幸せかもしれない…。



山本茂実
ああ野麦峠/続あゝ野麦峠/角川文庫
 明治維新後の日本の経済成長を支えた生糸。その柔らかな絹を得るために、企業は多くの工女を必要とし、貧しい農村の少女たちは厳しい山を越えて工場へと出稼ぎに向かう。故郷への道を厳しく隔てる峠が、厳しい労働に耐える人々の嘆きと望郷を象徴してそびえる。
喜作新道〜ある北アルプス哀史/角川文庫
 大正時代日本アルプスに生き、先見の明を持って急峻な山岳に新道を開いた猟師喜作。その伝記と、死にまつわる謎について。



由水常夫
鏡の魔術/中公文庫
 古代から現代に至るまでの鏡の開発史、日常生活や建築・芸術との関わりなどを解説する。写真が豊富に添えられていて面白い。白黒だったのが少々残念。



吉岡忍
墜落の夏/新潮文庫
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M/世界の、憂鬱な先端/文春文庫
 幼女連続誘拐殺人事件。今思うと、近年発生している「奇妙な」事件の一番初めがこれだったような気がする。怨恨と金銭と痴情。殺人の原因といえばほぼこれらのうちのどれかであったはずなのに、この事件では違った。どこか異常な、どこか違う…けれどその違和感がどこから発生したのかわからない犯罪。社会のゆがみと犯人の世界をオーバーラップさせながら、それでも第三者の視点を貫き通したこの本は、めまいのするような読了感と相俟って圧巻である。



吉田俊一
ホームレス暴行死事件/新風舎文庫
 新聞に連載された記事をまとめたもの。埼玉県熊谷市で発生した、中学生によるホームレス暴行死事件は記憶に新しい。普通の新興住宅地の、当たり前の中学生が引き起こした事件であり、地元の衝撃は大きかった。この本では少年たちの生育環境だけではなく、学校と家庭、さらに地域や市の対応についても言及し、再発の防止に向けた取り組みを提言している。感想を書いている私の地元なので、知っている地名や名前がぽろぽろ出てきて妙に身につまされた…。



読売新聞大阪社会部
警察官ネコババ事件/講談社文庫
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逆転無罪/講談社文庫
「お前たちがやったんだろう」―――そう言われて、たとえ身に覚えが無くとも「自白」してしまう状況。普段犯罪などに縁の無い生活をしているものにとって、それは想像しがたいことだが、この本で取り上げられた少年たちは、無実ながらも「促されるままに」自白を行ってしまう。婦女暴行犯の汚名を着せられ、獄中から無実を訴える彼らの苦闘、さらに被害者の関係者らの苦衷も綴った作品。冤罪について興味がある人は必読である。



読売新聞社会部
ドキュメント弁護士/中公新書
 弁護士とはおそらくもっとも身近に触れる法律の専門家である。弱きを助ける存在として頼りたいところだが、日々変化する法と社会のありように対し、利権に走ったり強きにおもねったりする弁護士も増えている。
 資格を持っている弁護士といえどオールラウンダーではなく、大体民事のみとか刑事のみとか、民事でも医療関連とか商法とか、とにかく専門分野というものがあるということも案外知られていないらしい。経験と本人の姿勢などにより、得ることの出来る助力も様々。仕事の多い都会のほうが弁護士は多く、地方では弁護士過疎の場所もあり、可能な法の権利に地域格差が生じたりもする。世話にならずにすむならそれに越したことはないが、何かの折に弁護士事務所に駆け込む事態に備え、軽く一読しておくことをおすすめしたい本である。